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コーチング・クリニックのすすめ (2020年1月号)後編

ども、最近セックスアンド・ザ・シティにハマっているやーくんです。ニューヨークに住みたくなりました

それでは前編に続き後編もいきますね。

 

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【2⃣PTGの概要と、選手を後押しする周囲のアプローチについて】

中村 珍晴 神戸学院大学心理学講師

心的外傷後成長(PTG)とは?

 自身の価値観や世界観を揺らがされる、あるいは崩壊させられる予期せぬつらい出来事と、それに引き続く苦しみを体験した後に、精神的にポジティブな変容をはたすこと。当初は大災害や大切な人との死別、戦争からの帰還兵などにPTGが報告されていた。しかし、最近では死に直面する体験以外にも、恋人との別れ、受験や就活での失敗など、本人にとっての衝撃度が強ければ、PTGのトリガーとなりえることが報告されている。

 レジリエンスとの関係も報告されている。レジリエンスとは日常的ストレスへの対応力で、いわゆる精神的回復力である。レジリエンスが高い人ほどストレスと上手に付き合うことができる。また、レジリエンスが低い人でもPTGが起こることが明らかになった。ネガティブ思考の選手やレジリエンスが低い選手がPTGのために必要不可欠なことは『自身との対話』である。自分との対話とは、時間をかけながら自分に起こった出来事を自分の中で消化していき、心理的なもがきや葛藤をしたうえで前向きに思考する過程のことだ。スポーツ現場ではプラス思考が重要だと言われるが、レジリエンスが低い選手はときにマイナス思考も重要になってくる。それは自分の内面と語り合う『反芻(はんすう)』を行うことで、PTGにつながることもあるからだ。ネガティブな経験や体験を大事にすることが、その後の成長や、真の意味でのポジティブ獲得するのではないかと考えている。

※反芻・・・転じて、くりかえし考え味わうこと。例)「師の言葉を―する」

 

心理的成長を促進するアプローチ

 トラウマを追うような出来事や、本人にとって高い衝撃度の出来事は、一人では押しつぶされてしまう可能性が高い。現時点でPTG を促進するためのアプローチは2つある。それは、『周囲のサポート』『選手自身がトラウマと向き合うこと』だ。

 周囲がどのようなサポートをすれば、PTGを促進するのかを調べた実験がある。ネガティブな状態にあるアスリートに対して、「具体的なアドバイスをする」、「励ます」、「その人自身を受け入れる」の3種類をアプローチを行った。結果は『その人自身を受け入れる』というアプローチだけが、PTGを後押しすることが分かった。ケガをした選手の中には「競技をできない自分に価値はあるのか?」と問いただす選手もいるだろう。そのような状況でも、「あなたにはあなたの価値がある」or「競技をしていなくても、あなたとの関係は変わらない」など、その選手自身を受け入れてくれる人の存在が、PTGのために必要不可欠な『自身との対話』につながるため、このような結果になったと考えている。

 もう一つの『選手自身がトラウマと向き合うこと』のために有効な方法の1つとして、『ライティングセラピー』がある。対象者に1日15分4日間、自身の気持ちや出来ごとついて書く時間を設けたグループと、何もしなかったグループを比較した、トラウマについての研究がある。結果は、何もしなかったグループに比べて、自分の気持ちや出来事について書く時間を設けたグループは、不安が軽減したり幸福度が増加した。このことから、『書く』という行為が、PTGにつながる可能性があると考えられる。

 衝撃的な出来事などを経験した後は、思考や感情が整理できず混乱状態になっている。『書く』という作業は、混乱したものを整理して言語化し、選手自身がトラウマと向き合うための手助けになると考えられる。書く以外にも、カウンセリングのように言葉に出すとことも有効だと考える。

 

▢カウンセリングの際に注意すること

 カウンセリングでは、「この人なら答えを与えてくれるかも」or「救ってくれるのではないか」と期待されがちですが、答えは与えられるものではなく、自分で決めていくものだ。「何も解決しなかった」と落胆されることも多いが、やはり本人が自身の力で解決することが理想的だ。この時に有効なのが、ロールモデル』を提示することだ。理由は、自分と同じような境遇から復活した人の存在を知り、「自分も頑張ればこのようになれるかもしれない」とイメージが湧くことで、選手がその中から答えを見つけ出しやすくなり、自身の力での解決につながるからだ。

ロールモデル・・・具体的な行動技術や行動事例を模倣・学習する対象となる人材。

 

▢PTGの注意点

 PTGはあくまでも結果としてあらわれるもので、PTGを目指すのは本末転倒である。そして、PTGを経験したからといって、困難な出来事自体が正当化されるわけではない。また、今まさに苦しい体験をしている選手に、PTGを押し付けることは避けるべきだ。なぜなら、PTGは苦しい体験をしている全ての人が目指すべき目標ではなく、あくまでも自身が経験するものだからだ。

 

▢真の強さとは?

 真の強さとは、『自分の弱さをしっかりわかっていること』だ。イメージするのは、しなやかで、強風もうまく受け止める「竹」のような存在だ。指導者やコーチには、選手が自分の弱みを打ち明けられる環境づくりが求めれる。「アスリートは強い存在」という固定概念も捨てる必要がある。

 

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それでは、またね✊